Project Story
「AIdea Suite」が示した近未来の可能性
生命保険募集プロセスの実証実験
- 生成AI
- DX推進


DX戦略部 DX戦略課
増井 丈洋 様
井村 洋輔 様
太陽生命様の生成AIを活用した生命保険募集プロセスの実証実験に、ネオスは2024年1~9月にかけて参画しました。生成AIによる会話を通じた情報収集と外部システムとのデータ連携を担当したネオスは、自社開発したGTPソリューション【AIdea Suite】を活用し、ミッションの実現に試行しました。今回は、太陽生命様の担当者である増井様と井村様に、実証実験の背景や、進行の様子、成果についてお話を伺います。

AI技術を駆使して、スムーズな対話と質の高い提案営業を実現
生成AIを活用した生命保険募集プロセスの実証実験を始めた背景を教えてください。
増井様:当社は既にインターネットチャネルの「スマ保険」というサービスを展開しています。本サービスをご利用いただくことでお客様は24時間、365日、保険加入が可能です。お客様のタイミングで即座に対応できる利便性の高いサービスですが、それが最良のカタチかというと、当社ではそれだけではないと考えています。あくまで営業職員チャネルがメインであり、営業職員が保険を勧めるのが一番大切だと考えています。
井村様:営業職員チャネルでは、お客様が保険を検討する中で出てきた疑問や保険プランの修正要望などを受け止めた上で、営業職員が保険のプロとして最適な保険商品を提案します。それに比べて営業職員が不在の「スマ保険」では、お客様ご自身で必要な保証の内容をホームページなどで確認し、判断しなければなりません。それでは保険に対する気づきに欠ける可能性や、説明文の見落としに気が付かないまま、購入に至るケースも考えられます。
増井様:営業職員がお客様の状況を把握して本当に必要だと考えるプランを提案し、そこからプランを再調整しながら保証内容や保険料を設定していく。そのような過程を経て、お客様に納得して加入していただくのが保険会社の責務だと考えています。理想はすべてのお客様が営業職員に相談し、多様化するニーズに一つひとつ応えていくサービスの提供です。そのためには、生成AIをはじめとした最新技術を用いた保険募集の実現が必要だという結論に至りました。
井村様:生成AIの技術進歩は目覚ましく「人間じゃなければできないよね」と今まで諦めていた領域も、可能になる未来が見えてきました。営業職員と同様の知識を持つAIが、営業職員の代わりに保険募集を行えるサービスが実現できないか? という思いから今回の実証実験が始まっています。


実験の概要とネオスに期待した役割を教えてください。
増井様:今回の実証実験では、営業職員の代わりにAIアバターを投入して、保険募集を最初から終わりまで実現できるかの検証を大きなミッションと位置付けました。その第一段階として、「実用に向けて必要な技術は何か?」という基本的な問いからスタートしています。お客様とのファーストコンタクトから契約締結まで、各工程で実験したい要項を洗い出し、技術分野を分割した上で、「この分野ではこのような検証をしたい」といった構想書を、各ベンダーに相談して進めました。その中の1社がネオスさんとなります。ネオスさんからは生成AIの一般的なプロンプトエンジニアリングだけでなく、Function calling(※1)をはじめとした最新技術を活用したご提案を頂きました。生成AIに対する技術水準が高く、今回の実証実験の協力企業の1社としてお願いすることになりました。
※1 Function calling:ChatGPTのもつ、プロンプト(ユーザーからの入力)に応じて関数の呼び出しを判断し、その結果を取り入れてチャットを行う機能
井村様:ネオスさんには「生成AIによる会話を通じて、保険プランを考える上で必要となるお客様の情報を収集できるか」というミッションに9か月にわたって取り組んでもらいました。この工程は非常に重要で、営業職員もお客様と会話しながら関係性を構築すると同時に、引き出した情報を基に保険プランを設計していきます。
増井様:保険募集におけるプラン決定までの過程を簡略化して説明すると3つに大別できます。「1、情報収集」「2、保険プランのご提案」「3、保険プラン決定に向けた調整と交渉」です。今回ネオスさんにお願いしたのは「1、情報収集」になります。情報収集ができれば「2、保険プランのご提案」は既に開発した営業端末で対応可能となります。「3、保険プラン決定に向けた調整と交渉」は「1」と同様にお客様との対話による情報収集が重要となるため実現できていません。1と3の部分においてAIの導入で解決は可能かを検討したいと考えました。

ネオスとの進行の様子を教えてください。
井村様:今回の試みは太陽生命としても初めてだったので、初動の議論を特に重視していました。ネオスさんはAIアバターが営業職員のようにふるまえるプロンプトの設定方法や操作方法についての提案に加えて、「実際にシステムを活用する上で欠かせない機能」についてもさまざまな視点でアドバイスを提示してくれました。中でも大きかったのは外部システムとの連携です。
増井様:今回は実証実験なのでお客様からの情報を収集するだけでミッションはクリアです。しかし、実際に保険募集のシステムを開発するなら当然、保険プランの設計をはじめ、収集した情報を基に外部システムと連携してお客様へ最適のサービスを提供していくことになります。スムーズな連携は重要となるため、最初から機能として入れ込んで実験を進めましょうと提案いただきました。

井村様:プロジェクト自体はアジャイル開発で改善を加えながら進行しました。毎週、1週間分の成果を共有いただき、我々の意見をフィードバックして、次週にブラッシュアップした結果を見せてもらうというのが基本の流れです。さらに、関連技術や仕様についても説明をわかりやすく資料にまとめていただいたことで、我々の理解も深まり、迅速かつ正確な意思決定ができたと感じています。
増井様:ネオスさんは保険募集のプロセスや、実際の生命保険募集での会話応答をよく理解してくれました。その姿勢は、成果物にもよく表れていたと我々は評価しています。我々の要望に対する回答も迅速で、毎週の進捗の打ち合わせが楽しみになるほど、理想的なアジャイル開発を実現できたと思います。

実証実験を終えての評価をお聞かせください
井村様:ネオスさんは期待に対して100点で応えてくれました。常に少し先を見ながら資料や成果物をつくってくれた印象があります。生成AIの最新技術はこうだが、数か月後にはまた違った技術が出てくるだろうと予測を立てて開発してくれました。実際、実験が始まった当初はGPT-4を使っていましたが、実験中にGPT-4oが登場しました。すると、どちらが良いかを比較するための資料も作成してくれ、私達はそれを見ながら状況の判断ができたんです。
増井様:良い意味でネオスさんは遠慮がなく、専門家として対等な立場と視点でプロジェクトを進めてくれていて、その姿は当社の保険営業と似ている部分もあると感じました。プロジェクト進行では状況に応じて、アプローチの優先順位を柔軟に見直し、時に大胆な変更 を提案してくれています。また、計画段階では「実現できれば良いな」程度に考えていた、入出力するテキストの音声化も、最新の音声認識・変換技術を調査して実装してくれました。これにより実験範囲が広がり、より多くの評価を得ることができています。
井村様:今回の実証実験では、保険募集の一部工程に対する課題を検証したにすぎませんが、今後は初期接触から最終契約まで、一連のプロセスを網羅的に検証する必要があります。それに今回の実験では悪意のある質問やイレギュラーな問いかけに、ハルシネーション(※2)を含む上手く回答できない課題が発見されました。まだまだ課題はありますが、今回の実証実験で我々が思い描く理想の姿は実現不可能ではないという感触を得られたのは大きかったと考えています。
増井様:今回の実証実験を経て、生成AIを用いれば情報収集だけではなく、その後の保険のプランニングやその説明や交渉、調整まで活用できる可能性があると考えるようになりました。単に情報収集のミッションだけをこなして、その結果を表示する画面を納品されただけでは、今回のような次回以降の構想につながるヒントは得られなかったでしょう。進化し続ける生成AIの最新技術のキャッチアップを含めて、ネオスさんにはAIによる保険募集の実現に向け、引き続き伴走者として力を貸してもらいたいと考えています。
※2 ハルシネーション:生成 AI が事実に基づかなかったり、事実に反する回答を生成してしまうこと。
Message
プロジェクトを終えて、ネオスの印象

WEBやクラウドという分野は、当社もまだまだこれから充実させていかなければなりません。この点に関して、ネオスさんは非常に多様な引き出しを持っている印象があります。非常に柔軟に対応してくれて話しやすく、技術的に難しい要望に対しても「できません」とは言わずに、「こういう方法ではどうでしょう?」と提案してくれます。また、複数案だして比較してくれる点も有難かったですね。「これしかないです」と済ませられたかもしれないのに、職人肌というか専門家としてのプライドを感じます。(増井様)
生成AIの技術が次々と進化する中で、私達に必要なのは信頼して相談できるパートナーです。今回、印象的だったのは最新の音声認識・変換技術を調査して実装する際に、最新の英語のリファレンスを見ながら作業するネオスさんの担当者の様子でした。「実装に少々苦労しています。でも、頑張ります!」という感じで進めてくれ、実際に納品されたシステムは今までのものより性能が良かったんです。新しい気付きを与えてくれるプロジェクトでしたし、今後も我々を一歩先へ誘導してくれるような相談相手としても期待しています。(井村様)


太陽生命保険株式会社
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